こんにちは、トワカと申します。
皆さんは「蜜蜂と遠雷」(恩田陸・著)を知っていますか?
映画化もされているので、聞いたことはあるかもしれません。
今回の記事では、書籍版を読んだ私が正直な感想を記していきます。
ネタバレは極力避け、良かった点・悪かった点を正直に書きます。
あくまで一個人の感想ですので、絶対的な意見ではありません。
参考の一つにしていただければ幸いです。
それでは、いきましょう。
総評
個人的評価:85/100
おすすめ度:98/100
全体を通して小説としての完成度が高く、非常におすすめの一作です。
人物像・感情の機微・空気感などが、本作では文字だけで肌に伝わってきます。
登場人物がそれぞれ生きており、内面が深く掘り下げられます。
外面から見て恵まれているように見えても、本人は深い葛藤や悩みに揺れ動いていたりと様々です。
重すぎる展開もありませんので、人を選ばずどんな方でも楽しめるでしょう。
難しい表現も少なく、本をあまり読まない方でも読みやすいです。
ただし、音楽やそれにまつわる才能をやや神格化しすぎている印象は受けました。
音楽をある程度本気で行ってきた人にとって、「本当にそんなことがあるのか」と懐疑的にならざるを得ない場面が一定数存在します。
あらすじ(詳細無し)
本作は音楽がテーマであり、さらにピアノに焦点を定めています。
非常に様々な経歴を持つ人物がコンクールに出場し、それぞれが影響を与え合います。
コンクールや音楽業界に関して、華やかな印象だけでない裏の複雑な事情などが詳細に描かれます。
才能や高い技術を持つ者、それらを持たない者、それぞれの苦悩が掘り下げられていきます。
とはいえ絶望一辺倒ではなく、誰しもが人生で経験するような、共感しながら読めるような日常の葛藤や悩みも含まれており、共感しながら読むことができます。
良かった点
キャラクターごとの魅力
本作にはメイン級のキャラクターが多く登場します。
しかし、それぞれが持つ性格や想い、経歴などが分かりやすく描かれており、混同することは全くありません。
才能がある者にも、彼らなりの大きな悩みがあるという部分を強めに描いている印象です。
ちなみに、私はある女性キャラクターを黒髪ボブとしてイメージしながら読んでいたのですが、映画版のキャストがまさにその髪型で驚きました。
見た目を事細かに説明しているわけではないですが、読んでいるうちに自然と実体を持った人物の姿が思い浮かぶのです。
言葉による表現力
作者である恩田陸氏は非常に繊細な言語化に長けており、例えそれが音や匂い、空気感のようなものであっても、言葉で巧みに表現してしまいます。
そのため、映像や音がごく自然と思い浮かびます。
臨場感や迫力のある小説、または感情の揺らぎが鮮明に描かれる小説が好きな人におすすめです。
単なる文字・文章であるのに、音が聴こえてくるという体験をする人もいるかもしれません。
それぞれの苦悩の表現
人生において、隣の芝生は青く見えることが非常に多いでしょう。
特に才能を持つ人間に対しては、良い面が強く印象に残り、嫉妬の感情が浮かぶこともあるでしょう。
本作では、才能を持つ側、持たない側の苦悩がどちらも鮮明に表現されます。
決して「どちらのほうが大変」という比較の話ではなく、それぞれの悩みがすべて確かに質量を持った悩みとして描かれているのです。
本作を読んで、「才能があるから常に幸せなんだ」「得してばかりだ」という感想は抱きにくいです。
悪かった点・微妙な点
中途半端な恋愛要素
恋愛に関してはほとんど描かれない本作ですが、恋愛的文脈を仄めかす文言がしばしば用いられます。
音楽を根幹とする本作において、それらは良い効果をあまり感じませんでした。
「音楽を軸に据える者たちの人生の描写」が恐らく真のテーマであるため、恋愛を完全に除外する必要があるとは思いません。
しかし、音楽に関する文脈の中でそういった内容が描かれ、気が散ってしまったというのが正直な感想です。
大げさな表現
原文ではないですが、「会場にいた誰もが同じ感覚を共有していて、震え上がった」的な大げさな表現が目立ちます。
本作は登場人物の主観での説明が主ではありますが、「その場にいた全員が」というのは現実的に考えてあり得ないだろうと感じました。
どんなに素晴らしいものだったとしても、その感じ方にはかなり大きな個人差があるはずです。
文章で感動を表現するためには仕方がなかったのかもしれませんが、もう少し現実味のある表現ならと個人的に感じました。
不自然な下ネタ(一箇所だけ)
若年の女性ピアニストが、音楽で得た快感をオーガズムに例える場面がありました。
「下世話な話だけど」と前置きがついていましたが、唐突なこともあり文脈から浮いている印象を受けました。
若い女性にそういった文言を言わせたかったのか、または奇妙さで面白みを持たせたかったのかは不明ですが、少なくとも私は好きではありませんでした。
まとめ
総合的に見て非常にクオリティが高く、読み応えのある一作です。
有名で読んだことのある人も多いですし、とてもおすすめです。
この記事が皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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